3. 工法
3-1.在来工法の危機
伝統建築にはその土地の気候に合わせた工夫や工法が古来から用いられてきました。
日本の住宅は暑さに対しては風通しのよい構造にすることで、蒸し暑い夏を過ごしやすくしています。
しかし、寒さ対策をしていなかったというのが大きな問題でした。
日本の住宅は、家全体を暖めると言う概念を持たなかったため、せいぜい、個々の部屋で採暖するために囲炉裏や火鉢を準備するだけでした。
つまり、必要な部屋だけ採暖し、家全体を暖房すると言う考えがなかったと言えます。
これは、現在にまで引き継がれることになり、ほとんどの人が冷暖房と言えば、個々の部屋で行う冷暖房が当たり前と考えてしまい、こうして、日本の住宅の悲劇(結露とシックハウス問題)がおこっています。
近年、特に80年代のオイルショック以後に建てられた住宅は、急ごしらえの省エネ思想の下に湿気対策の無い断熱性を重視していました。
また、平行しておこなわれた冷暖房機器の普及により、住宅では夏冬の室内外の温度差が絶えず最大になるような生活が一般化しています。
つまり、室内外の温度差が大きくなり個室ごとの空調の考えで空気が動かず滞留する状態をつくる、いわば結露製造器のような状態になっているのです。
こうして、在来工法のままで、従来どおりの断熱材を押し込んで家を造ることにより、あちこちで結露が発生し、特に壁内部では腐朽菌が繁殖しやすい状態になっており白アリ、カビ、ダニなどが大繁殖しやすい状態になっているのです。
つまり冷暖房機器の普及により住宅の従来通りの造り方が結露、湿度対策が不完全な工法になってしまったのです。
家を造るならば、第一に、この問題に気付いている工務店に依頼すべきです。
また、国民生活が戦前の開け放たれた生活様式に戻れば何ら問題はないのですがそれは無理な話でしょう。
ですから、今日の生活様式に合わせた工法への変化が必要なのです。
家を造る仕事に従事しているならば、人が健康に暮らすため、家が長持ちするために、結露を起こさない「断熱と気密、換気計画」をほどこした構造の家にすることが今後の家造りの基本であり最重要課題と認識すべきです。